食べる力が弱くなってくると、むせやすい、飲み込みに時間がかかる、食事が疲れるといった困りごとが増えがちです。嚥下訓練はこうした負担を軽くし、毎日の食事を安心して続けるための大切な取り組みです。

本記事では、嚥下障害とマッサージの関係をわかりやすく整理し、どのような場面で役立つのかをお伝えします。

安全に配慮するため、実践する際は医師や言語聴覚士、リハビリ専門職の助言を得ながら進めていただくことを前提にしています。

1. 嚥下障害とマッサージの関係

1-1. 嚥下障害とは何か

嚥下障害は、口に入れた食べ物や飲み物を適切にまとめ、喉を通して食道へ送り込む働きがうまくいかない状態を指します。

原因はさまざまで、加齢による筋力低下、脳血管障害やパーキンソン病などの神経疾患、口腔内のトラブル、体調不良による一時的な機能低下などが含まれます。

症状としては、むせやすさ、のどに残る感じ、痰が増える、食事に時間がかかる、体重減少や脱水傾向が続くなどがみられます。これらが重なると栄養状態や生活の質に影響し、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。

1-2. なぜマッサージが有効なのか

嚥下では、顎や口の周囲、舌、舌骨の周り、首の前側から側面にかけての筋群が連携して働きます。これらの部位がこわばっていたり、血流が滞っていたりすると、口の中で食べ物をまとめる動きや、のどを開くタイミングが取りづらくなります。

マッサージは皮膚や筋膜、筋肉に穏やかな刺激を与えることで、緊張を和らげ、血流やリンパの巡りを助け、必要な筋群が動きやすい状態づくりに寄与します。

直接的に飲み込みを強くするというより、口腔体操や嚥下訓練が行いやすくなるよう土台を整える位置づけと考えると理解しやすくなります。

1-3. マッサージで期待できる効果

期待できる効果は主に三つあります。

第一に、口や顎、首周りのこわばりが軽くなり、発声や咀嚼、唇の閉鎖といった前段階の動きが滑らかになります。第二に、飲み込む直前のリラックスが得られやすくなり、食事中の緊張や不安が和らぐことで一口の量やペース調整がしやすくなります。第三に、巡りが整うことで口腔内が動かしやすくなり、舌や舌骨の周囲が動く準備が整います。

なお、明らかなむせの増加、のどの痛みや腫れ、発熱、急な体調変化がみられる場合は、自己判断で続けず医師へ相談することが大切です。マッサージは単独ではなく、姿勢の工夫、食形態の調整、口腔ケア、専門職が示す嚥下訓練と組み合わせることで、より効果を発揮します。

2. 嚥下訓練に用いられる主なマッサージ方法

2-1. 顎まわりや口の周囲をほぐす

姿勢：背もたれのある椅子に腰かけ、肩の力を抜いて呼吸をゆっくり整えます。

手順：

1. 頬骨の下から口角に向けて、小さな円を描くようになでる
   
   
2. 口角から顎先へ、さらに耳の下へ向けてなで上げる
   
   
3. 唇の外側を指で軽く押さえ、一周しながら唇を閉じる動きを数回行う
   
   

ポイント：顎関節に強い痛みがある場合は避けてください。力を入れすぎず、やさしく触れる程度で十分です。

2-2. 舌や喉の筋肉を刺激する

姿勢：顎を軽く引き、首の前側が突っ張らない位置に整えます。

手順：

1. 舌を口の中で前後左右にゆっくり動かす
   
   
2. 顎の内側を耳の下から顎先に向けて、指でやさしくなでる
   
   
3. 喉仏の少し横を、上から下、下から上へと軽くさする
   
   

ポイント：皮膚の上を滑らせる程度で行います。頸動脈が脈打っている場所を強く押さないよう注意してください。むせや違和感がある日は回数を減らしましょう。

2-3. 唾液腺を促す

姿勢：背筋を自然に伸ばして座ります。口は軽く閉じ、リラックスした状態を作ります。

手順：

1. 耳の前（耳下腺）を指で小さな円を描くように刺激する
   
   
2. 顎の内側（顎下腺）を顎先から耳の下に向けてゆっくりなで上げる
   
   
3. 舌を前に出したり、口をすぼめて軽く開いたりして舌下腺を刺激する

ポイント：口腔内に炎症や傷がある場合は避け、うがいや口腔保湿で整えることを優先します。義歯が安定していない場合は外してから行うとより安全です。

3. ご自宅で行う際の注意点

3-1. 強く押しすぎない・痛みが出たらやめる

嚥下に関するマッサージは、やさしい刺激で十分に効果があります。

強く押し込む必要はなく、皮膚の上をなでるような感覚で行うのが理想的です。赤みが長く残る、翌日にだるさや痛みが出る、しびれが走るといった変化がある場合は、力が強すぎるサインと考えられます。そのようなときはすぐに中止し、次回はより弱い圧で短時間から様子を見てください。

3-2. 飲み込みに不安があるときは無理しない

むせが増えている日や咳が続いている日、発熱やのどの痛みがあるときはマッサージを控えるようにしましょう。

特に食後すぐは避け、少なくとも30分以上あけてから行うと体への負担が少なくなります。声が湿った感じになる、のどの違和感が強くなる、唾液や水分でむせやすくなるといった変化が見られる場合も、一旦中止して体調が落ち着いてから再開することが大切です。

3-3. 必ず医師や専門職に相談しながら行う

嚥下障害の背景には脳血管障害やパーキンソン病、頸椎疾患や心肺の病気など、注意が必要なケースが含まれることがあります。自己判断で進めるのではなく、必ず主治医や言語聴覚士、リハビリの専門職に相談しながら行いましょう。

マッサージを行った日時や内容、体の反応を簡単に記録しておくと、専門職に経過を伝える際に役立ちます。もし新たに息苦しさや強い痛み、発熱、急な飲み込みの低下が見られた場合は、すぐに中止し、医療機関への相談を検討してください。

4. 皆んなの訪問リハビリマッサージでできるサポート

4-1. 専門職による安全な施術

嚥下に関わるマッサージは、強さや部位を誤ると負担になる場合があります。

皆んなの訪問リハビリマッサージでは、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師などの専門職が、ご本人の体調や既往歴を確認したうえで施術を行います。そのため、自己流で取り組むよりも安全性が高く、安心して継続することができます。

4-2. ご本人の状態に合わせた訓練プラン

嚥下の状態は一人ひとり異なり、必要となるアプローチも違います。皆んな訪問リハビリマッサージでは、口や顎の動き、首の可動域、むせの頻度などを確認しながら、個別の状況に合わせた訓練プランを立てます。

マッサージだけでなく、嚥下体操や姿勢の工夫、生活の中でできる予防方法なども組み合わせることで、より効果的に嚥下機能の維持を目指すことができます。

4-3. ご家族やケアマネージャーとの連携

在宅で嚥下訓練を取り入れる際には、ご家族やケアマネージャーとの協力が欠かせません。

皆んな訪問リハビリマッサージでは、実施内容や経過を共有しながら進めるため、ご家族は普段のケアに取り入れやすくなり、ケアマネージャーはケアプランに反映させやすくなります。連携を重ねることで、無理なく続けられる支援体制を整えることができます。

5. まとめ

嚥下に関わるマッサージは、口や顎、首のまわりをやさしく刺激することで筋肉のこわばりをほぐし、飲み込みやすい状態を整える助けになります。

毎日の食事を安心して続けるためには、こうした小さなケアを積み重ねることが大切です。ただし、強く押しすぎないこと、体調がすぐれない日は無理をしないこと、そして必ず専門職の助言を受けながら取り組むことを忘れないようにしましょう。

ご自宅でのケアが難しい場合や、ご家族だけでは十分に対応しきれないと感じるときには、皆んなの訪問リハビリマッサージの利用も一つの選択肢です。札幌・千歳・恵庭・小樽を中心に、国家資格を持つ施術者がご自宅に伺い、お身体の状態に合わせた嚥下ケアやマッサージを行っています。

日常生活に寄り添ったサポートを通して、食べる力や生活の質を守るお手伝いをしていますので、まずはお気軽にご相談ください。

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